2012年4月19日木曜日

どこかできいてるクラシック④






前回・前々回紹介した高尚(?)な映画以外にも、

クラシック音楽は使われています。


たとえば、最近ダイハツのCMに出ている

ブルース・ウィリスの頭に、

まだヘアがあった頃の「ダイ・ハード2」。



爆発した飛行機からの爆風にさらされても…

(普通、一緒に飛んできたガラスや金属片で千切りにされる)


大きなガラス踏んじゃって足の裏を切っても…

(普通、足裏は神経が集中しているので、怪我したらほとんど歩けない)


猛スピードのクルマから飛び降りても…

(普通、アスファルトとの摩擦で摺りおろされてミンチになる)


…絶対死なないジョン・マクレーン。

(あれ、他のシリーズの話混じってるな…。)



公開当時の複雑な国際情勢や、

推理的な要素も絡んでくるけど、


とにかく、その医学や物理学を無視した

スーパーアクション・演出に

興奮させられます。



「2」では特に、クライマックスが圧巻。


↓ラストの超演出(ネタバレ!)



いや~、いま見ても、カッコいいなあ。




さて、敵を全滅させ、大円団?のエンディングで

流れるのが、この曲。




フィンランドの英雄的作曲家、

ジャン・シベリウスによる、

その名も「フィンランディア」という曲。





















ジャン・シベリウス(1865-1957)

曾孫はヘヴィメタバンドのベーシスト



なんで痛快活劇風のアクション映画に

フィンランドの曲が使われたのか?


監督(レニー・ハーリン)がフィンランド出身

ということもあると思われますが、


「フィンランディア」が作曲された経緯にも

そのヒントがあるでしょう。




この作品が書かれたのは19世紀末~20世紀初めごろ。


この時代、というか20世紀に成るまで、

フィンランドという名前の独立国は

歴史上、存在したことがありませんでした。

(当時はロシア領、その前は長らくスウェーデン領。)


いまや世界でもトップレベルの豊かな国が

(一人当たりGDPでは日本より上位)

100年前にはまだ存在しなかったと思うと、

不思議というか、フィンランド国民頑張ったというか…。



さて、大国に挟まれ運命を翻弄されてきた

そんなフィンランドでも、

19世紀になると独立運動が本格化。


この頃、このムーブメントにのって、

フィンランド民族意識と独立運動を

応援する演劇作品が作られ、

その伴奏曲として作曲されたのが

「フィンランディア」なのです!



音楽は、ロシアの圧政を思わせる

重苦しい雰囲気で始まり、

徐々に緊張感を高め、

独立運動の盛り上がりを表現。


やがて安らかで美しいメロディが現れ、

最後に華やな展開で独立の勝利を象徴する、

という構造になっています。



作曲の目的が政治的で過激なだけに、

一時は帝政ロシア政府によって演奏を

禁止されたこともあったそうなのですが、


今では世界中のオーケストラによって演奏され、

また第2の国歌として、フィンランドの人々に

親しまれているそうです。


オーケストラによる全篇演奏



「ダイハード2」では、この曲の持つ

「抑圧から解放へ」「戦って、勝利と平和を」

というイメージを、伏線として取り入れようと

したのではないでしょうか(多分)。



映画以外でも、最近ではNEXCO中日本の

新東名高速道路のCMに使われています。


(いったい、何からの解放なんだろう…?)


2012年4月18日水曜日

どこかできいてるクラシック③






映画に使われたクラシック音楽の話を続けます。



よくタイトルは聞くけれど、

内容が(個人的に)よくわからない

映画その2、「2001年宇宙の旅」。



私、映画を見る前に、小説版を読んだのですが、

ラストの展開が訳わからず、

映画を見てもよくわからず…。


(ボーマン船長は結局どうなったんだ?)



でも特に冒頭の映像と、音楽の組み合わせは、

とても印象的でした。


「2001年宇宙の旅」予告編。曲は00:15くらいから。


今でも、宇宙モノのドキュメンタリー番組の

オープニングなんかでよく耳にするこの音楽。


映像の雰囲気とベストマッチですが、

映画オリジナルのサントラではありません。



曲の正体は、20世紀前半を代表する(した)作曲家、

リヒャルト・シュトラウスの手による

交響詩「ツァラトゥストラはかく語りき」の、

冒頭のファンファーレ部分。















リヒャルト・シュトラウス(1864-1949)

「シュトラウス」というのはドイツ語圏に多い姓で、

元々は「ダチョウ」という意味。



意地悪な早口言葉みたいなタイトルですが、

私、いまだに自信を持って暗記で

発音することができません…。


哲学者ニーチェの、同じタイトルの哲学研究書に

インスピレーションを得て作曲されたと

言われていますが、


ニーチェの小難しい本(←失礼)とタイトルとは違って、

華やかで、美しく楽しい曲になっています。



いまの、特にハリウッド映画では、

BGMにフルオーケストラの演奏を使用することが

よくありますが(オリジナル曲かはさておき)


その嚆矢となったのが、この、「2001年宇宙の旅」と

「ツァラトゥストラはかく語りき」の組み合わせ。



前例がなかったせいか、

音源の使用申請を受けたレコード会社は

演奏者名(カラヤン指揮、ウィーンフィル演奏)

出さないことを条件に許可を出したそうです。


結果、

映画が注目を集めても他の会社から出ていた

他の演奏者のレコードの方が売れてしまい、


音源を提供したら大損害を被ったとか。

(と、何かのCDブックレットで読んだ。)



広告的な観点で考えると、

何とももったいない話ですね。



ちなみに、インパクトのある曲のため

CMにもよく利用されています。


トヨタ Camry アメリカでのCM(2012年)


2012年4月17日火曜日

どこかできいてるクラシック②






テレビや雑誌で、

「この映画は見ておくべき!」なんて特集があると

ついついチェックしてしまうのですが、

(権威やお墨付きに弱い)


そういう特集に入る作品の半分くらいは、

見ても個人的にはよく分かりません…。



そんな作品の最たる例が、

フランシス・コッポラ監督の「地獄の黙示録」。


TSUTAYAで借りてきて、

さぁどんな映像が出てくるんだ!と

ワクワク見始めたのはいいものの、


(実際、印象的なシーンが多い)


途中から、平和ボケしたアタマの

理解の範疇を超えてくる。



まあ映画の本質的な話は他に譲るとして…。

(正直、あまり詳しくない…。)



この作品の印象的な映像を、

より印象深くしているのが、たくさんのBGM。


中でも最も有名(だと自分は思っている)なのが、

かっちょいいヘリコプター部隊の映像と

かっちょいい曲の組み合わせ。


(↑ジャストのシーンが埋め込み禁止なので予告編です。)



整然と並んだヘリコプター編隊が川を越え森を越え、


ベトコンが潜む村を機関銃でなぎ払い(ちょっとグロい)


戦闘機から放たれたナパーム弾がジャングルを焼き払う。


そして、戦場のすぐ近くでサーフィンをする

(というか波乗り場所のために敵の基地を攻撃をしている)

マッチョでクレイジーなキルゴア中佐(←ヘリ部隊の隊長)




戦争映画の虐殺シーンなのに、

不謹慎にも見る度に

「メチャクチャかっこいい!」と思ってしまいます。



この映画、このシーンだけ好きです。




で、やっと本題に入りますが、



このシーンでかかっているのが、


・19世紀にドイツで活躍したワーグナーの手による、

・舞台祝祭劇「ニーベルングの指輪」の中の

・第1夜「ワルキューレ」の中の

・「ワルキューレの騎行」という曲。
























リヒャルト・ワーグナー(1813-1883)

今でいう「買い物依存症」の兆候があったらしい。



長ったらしいタイトルですが、

一般には「ワルキューレ騎行」で通じています。



「ニーベルングの指輪」というのは

ゲルマン人やヴァイキングの神話を下敷きに作られた楽劇で、

ひと演目を通すのに約15時間(!)かかると言われる超大作。



無論、一日では全てを上演できず、

一通りやるのに4日間かかるので、

「第1夜」(第1幕ではない)という

プログラム分けになると。



「ワルキューレ」(英語読みでは「ヴァルキリー」)

とは、北欧の神話に出てくる女性の姿をした神の使いで、


勇敢に戦って死んだ英雄を

天国(いわゆる「ヴァルハラ」)に迎える存在。


タイトルとモチーフに合った勇敢な曲想ですね。


↓オーケストラによる全篇の演奏


コッポラ監督の父親はフルート奏者だったそうですが、

その影響なのか、映画史に残る映像と音楽の組み合わせだと

(個人的に)思います。



またCMでは、最近レッドブルに

使われているのを見かけました。


(遺産を全て愛人に貢いだおじいさんを叩きのめすために、

レッドブルを飲んで翼を生やしたおばあさんが、

天国に殴り込みんでいく、という内容のもの。)




ところで、イギリスでの調査によると、

「ワルキューレ騎行」は「ドライブ中に聞くと危険な曲」

ランキングでナンバー1だそうです。



まだヴァルハラには行きたくないなぁ。