
今をさかのぼること50年ほど前、
東京を騒がせた前衛芸術集団がいました。
山手線を特異な格好(顔を白塗り等)で乗車し、
ひと駅ごとに降りてパフォーマンス したり、
東京オリンピック直前の銀座の街を、
白衣を着て、薬品などを使い、異常なまでに掃除する など
路上や駅、ホテルなど日常的な場所で非日常的な行為をし、
表現していたそうです。
彼らは「ハイレッド・センター」というグループで
「老人力」でも有名な赤瀬川原平さん、
高松次郎さん、中西夏之さんの3名を中心に活動していました。
(その他、オノヨーコさん、横尾忠則さん、岡本太郎さんなども参加していたそう)
↓ハイレッド・センター「首都圏清掃整理促進運動」↓
wikiには
「彼らの集団は様々なイベントや行動によって、
それが芸術であるかないかという事を
制度的に問いかけようとした。」
とあります。
50年後のいま、大震災後のこのとき、
渋谷駅 岡本太郎の壁画「明日の神話」に
福島第一原発事故を思わせる風刺画が書き足されたのを見て
私は「ハイレッド・センター」を思い出しました。
岡本太郎タッチだけど、
ちょっとタイムボカンみたい…
数日間誰の仕業か分からずワイドショーでも話題になりましたね。
結局これは以前もご紹介した「chim↑pom」によるものと
本人達の公表から判明し、
そのドキュメンタリーも流される展示会が、
清澄白河で6日間開催されたのでした。
↓予告編↓
私はひとり、日本の現代アート史(そんなんあるのか)に残る
一大事件だ!と興奮し
この展示は必ず見なければなるまい~と息巻き
足を運んだのでした。
しかしそこでは壮大な肩すかしが待っていました。
当然メインだろうと思われていた「明日の神話」の付け足し絵
(『LEVEL 7 feat. 明日の神話』)が
いともあっさりと壁にかかっているだけで終わっていたのです。
彼らの中では、岡本太郎が原爆の炸裂する瞬間を描いた
「明日の神話」に絵を足す事は、
単に今回の展示のプロモーション行為に近く、
その他にも用意された度肝を抜くような作品達のほんの一部でしかなかったのでした。
展示作品詳細
防護服を着た彼らが福島第一原発所の相当近く(多分規制されている今は考えられないほど近く)まで無言で歩き
かついできた旗に日の丸を描いた…とおもいきや放射能マークにし、力一杯原発に向かって振る映像や
福島第一原発から30キロ地域周辺の植物を除染し制作した生け花、
被災地で被災者の若者達と一緒に円陣を組み「気合い」を入れる(「宮城がんばれ」「福島かんばれ」等の応援だったのが「彼女つくるぞ」等の関係ないものに変化して笑いが起きる)「気合い100連発」映像、etc…
もともと「chim↑pom」は広島の空に「ピカッ」と書くなど
「核」を重要なテーマとして扱っていたこともあり、
多くのアーティストが未曾有の災害で活動意義を考え込んでいる中
「いま」「このとき」「瞬発的」に作品を制作し展示する意味は大きかったと思います。
かつての「ハイレッド・センター」とは
根本的に活動意義がちがうと思いますが
放射能にまみれた体当たりの行為は、
50年ぶりに芸術が表社会に現れたかのような衝撃でした。
ちなみに、世間では散々叩かれた『LEVEL 7 feat. 明日の神話』は
岡本太郎記念館の館長・平野暁臣さんに「いたずらと切り捨てられない」と語られています。
よかったねえ。
ただ、
「原発とかどうなわけー!」とがむしゃらに叫ぶことは必要かもしれないけれど
そんなこと実は日本中が考えているわけで
それに対する「chim↑pom」なりの答えが見たかったな。というのが
正直なところ。
原発なく皆が幸せに暮らす方法はあんのか、なんなのか、どうすればいいのか
誰か教えてと強く思ったのでした。
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