
『chim↑pom』(チン↑ポム)はグループ名もなかなか過激ですが
活動もかなり過激で刺激的で物議を醸す、若いアーティストの中で最も注目されている集団です。
どのぐらい過激かというと……
・渋谷で捕まえたドブネズミを剥製にして「ピカチュウ」を作った。
(「スーパー☆ラット」)
・知らない人に電話をかけ、銀行口座を聞き出しお金を振り込むというパフォーマンス
(「オレオレ」)
・カンボジアで撤去した地雷で自前の高級バックや石膏を爆破
(「サンキューセレブプロジェクト「アイムボカン」)
・広島の上空に飛行機で「ピカッ」という文字を描いた。
(「広島!」)
…………など。
広島の上空に文字を描いたパフォーマンスは相当問題になり、
初めて美術館個展を開催する予定だった
広島市現代美術館での展示が中止になり、
被爆者7団体に陳謝。
謝罪の模様はマスコミ各社に翌日報道されたほどです。
彼らの作品は黒すぎて一瞬ドン引き。
するんですが、なぜかもっとその黒い中にある中身を見てみたくて
こちらから近づいてしまう、そんな感覚になります。
今回の展示も、すごかったです。
展示タイトルは「Imagine」。
会場に入る前に張り紙がしてあり、なにやら説明が書かれていたのですが
せっかちな私はろくに見ず突入。
するとそこは一点の明かりも無い真っ暗闇でした。
…じつはけっこう強めの閉所&暗所恐怖症なもんで一瞬にしてパニック!
やばい、吐くー。じたばたじたばたじたばたじたばたじたばたじたばた…
必死の形相で広い空間にたどり着くと大きいスクリーンに映像がながれていました。
…その映像は、盲人の「にらめっこ」。
わ、…笑えない…。
世の中にこんなに笑えない「にらめっこ」があるとは…
別室に作品は続きます。
点字が刻まれたエロ雑誌(下着姿の上に点字が書かれている)、
ラインストーンで出来た点字が書かれたパネル(きらっきらに輝いている)、
3D映画のチケットを買う盲人のドキュメント映像…
(盲人が映画のチケットを買う際、3Dにしますか?と勧められるやりとり)
「めだかの学校」が「めくらの学校」に替え歌された楽譜と歌う盲人…
(めーくーらーのがっこうはーかやのーそとー♪と歌っている)
こうなると最初の真っ暗闇の意味について、
否が応にも考えさせられてきました。
そして私が「笑えねえよ」と思った経緯も、
じわりじわりと思い返してしまいました。
盲人同士の「にらめっこ」もエロ雑誌もドキュメントも、一瞬笑いそうになったんです。
でも、それをすぐに「笑っちゃいけない!」にすり替えてしまった。この作業って、なに?
よくよく知ると、今回の展示でことあるごとに登場していた盲人は
ブラインドサッカー日本代表として活躍する盲人の『ハジくん』という人で、
その「ハジくん」ともう一人の盲人同士の「にらめっこ」は、
ヘン顔を見たchim↑pomの笑い声に笑った方が負けというルールで、
エロ雑誌に書かれていた点字はなにもエロ雑誌の説明ではなく、
オノ・ヨーコの「グレープフルーツ」という詩集の文言
(「飛びなさい」「水をやりなさい」等、ジョン・レノンの「Imagine」の基になった詩)で、
ラインストーンの点字は「KIRA KIRA KIRA…」と書かれていて…、
知れば知るほど、瞬時に働いた自分の「理性」ってなんなんだろう、
打ち消そうとした「笑い」はダメなものだったの?でもちょっと残る嫌悪感はなあに…?
ぐるぐる考えた事も無かったことを考え始めて
「障害者を笑っちゃいけない」とか「見えないのはかわいそう」とか
なんかあんまり近寄りもせず考えもせず決めてかかってたな、と。
今でもまだ、あの展示について考え続けているところなんです。
展示が面白かったのか、なんなのか答えはでていません。
でも、とりあえず自分がなあなあで済ませようとしていた事を
考える事が出来て、気づく事が出来て、よかった…?
そして、chim↑pomが「見える」「見えない」の問いを
ハジくんという盲人との交流からどれだけ真剣に考えたのかは
一枚の写真からうかがい知れたような気がしました。
一瞬「やっぱやばいんじゃないの」と思うのですが、
よくよく見ていると、展示を見た後だと
「…そう思ってしまう自分って、何様?」って
ぶつけた問いが倍の勢いで返ってくる感覚です。
広島の空に文字を描いた後、
被爆者団体に謝罪した事から交流が始まったという後日談などからも
chim↑pomという集団は、軽いノリで作っているかのようで、
実は泥臭く真っ正面から取り組んでいる硬派なアーティスト集団なのかも、と
思い始めていています。
ちなみに私がろくに読まなかった説明文は以下です。↓
見えない世界へようこそ。
堅く眼を閉じてください。暗闇の中で心や頭のスクリーンにはどんなものが映ってますか?たくさんの情報を与えてくれる視覚が失われたところから、無限の想 像力を駆使して進む旅が始まります。それは到底人には話せないような馬鹿げたことだったり、叶いそうもないような壮大なものだったりするかもしれません。 しかしながらそれははっきりとスクリーンに映り、あなたの心をどきどきさせることでしょう。そんな人間の五感をフル活用した世界にあなたも足を踏み入れて みませんか?きっとあなたの五感が震えだし見えなかった何かが見えるはずです。そして見終わった頃には「いつ見えなくなっても大丈夫」なあなたがいるはず です。
残念ながら、なによりも改めて思ったのは
「やっぱ暗闇ムリ」でした… 克服したい…
0 件のコメント:
コメントを投稿